皆が答えを出す時間を稼ぐかのように、天沢は一拍置いてから話を再開した。
「正直、寂しさや不安を感じている人もいると思います。
…新しいクラスに対してだけじゃない。
色々な悩みを抱えている人。恐怖に押し潰されてしまいそうな人。生きていることが辛い人。
誰もが、簡単に人生を歩めずにいる」
天沢の声は、今にも消えてしまいそうなくらいに繊細で、脆かった。
彼がどれだけの思いを込めているのかがよくわかる。
天沢が綴った言葉は、予想以上に重くて…、皆も言葉をなくしていた。
思い上がりかもしれないけれど…
今、彼の頭の中には私がいるのかもしれない。
全てに疲れて、廃ビルの屋上から飛び降りようとした、惨めな私が。
「その苦しみを、痛みを、傷を…理解できるとは簡単には言えない。…でも、理解したいとは思っています。
辛くて怖くて苦しくて…どうしようもないとき。
傷ついた人が、来たい、会いたい、って…。
そんな風に思えるクラスを、僕は築いていきたい。
そう思っています」
誰もが、天沢だけを見ていた。
窓から注ぐ淡い光に包まれた、眩しい君を。
優しい人だ、と今更思った。
嘘でも偽りでも夢でも、きっとない。
こんな綺麗な言葉を、心を、私は知らない。
呆然と言葉を失っていると、教室内に拍手が響いた。
拍手なんかじゃ足りないくらいに、皆が天沢を称えているのがわかる。
それに気づいた彼は張っていた緊張の糸を緩めて、「ありがとう」と温和な笑みを浮かべた。
その柔らかい笑みが引き金になって、始めは小さかった音がどんどん大きくなっていく。
気づけば、私すらも手を合わせていた。
「ありがとう。
一年間、予想もつかないことが多々起こると思いますが、皆となら乗り越えていけると信じています。
よろしくお願いします」
天沢が席に座った後も、さっきまで彼が立っていた場所には光の余韻が残っている。
それくらいに、天沢は眩しい。
君は、他の誰とも違う。
皆の希望で、太陽だ。
