「一人一人自己紹介をしてもらいたいところだが…時間もないし、誰かに代表でクラスの目標を言ってもらうか」
私は整理のつかない頭で、ぼーっと先生の声を聞いていた。
代表とか…やりたい人そうそういないよ。
どうせ、一番頭が良くて、何も文句を言わない「彼」に決まる。
せっかくなら指名すれば良いのに。
結果は目に見えているじゃん。
どこか反発的な思考になっているけれど、別に津谷先生のことは嫌いじゃない。
だとすれば…
私は人を否定することしかできないのかな。
そう気づいた瞬間、自分の醜さに寒気がした。
「代表?天沢で決まりだろ」
「王子、一発かましてやれ!」
私がどんな感情に支配されていようが、周りの時間は淡々と進んでいく。
予想通りの名前に、私は顔を上げて彼の表情を確認した。
特に困った様子はない。
これも慣れてるってことだろう。
やっぱりどこをとっても天才は天才だ。
「僕で良ければ」
にこやかな爽やかスマイルに、女子が黄色い歓声を上げる。
私はため息を吐きたい気持ちを呑み込んで、天沢を目で追った。
彼は、何を言うのだろう。
虐めのないクラスにしよう、とか?
皆で協力して頑張ろう、とか?
…いや、少なくとも私が考えつくような単純なことは言わないだろう。
あー、もー疲れる!
どうしてこんなにも、目を離せないのだろうか。
彼のこととなると、疑問が過ぎってやまない。
天沢はすっと音もなく椅子から立ち上がる。
そして、まるで空中に浮いているかのように、静かに皆の前へと足を運んだ。
さっきまでそこに居た津谷先生と比べると、一回り二回り以上小さい。
そのはずなのに。
輝かしい彼の姿は、誰よりも存在感を発揮している。
彼は一度瞼を落としてから、緩く口角を上げて皆に澄んだ瞳を見せた。
「僕は天沢千晴です。
皆さん、新しいクラスに変わって今の心境はどうでしょうか?」
天沢の、柔らかくて美しい声が教室に響く。
そんなに声は大きくないのに、何故か真っ直ぐに耳に届く声。
誰もが惹かれて、彼の世界に引き込まれていく…。
