もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい


グチャグチャに絡み合った思考を消したのは、鞄から聞こえる懐かしい音だった。

メッセージの着信音。

そういえば、七菜香と連絡を取らなくなってからは聞いてなかった気がする。

私は見るつもりはなかったのだが、天沢がどうぞと言わんばかりに頭を軽く下げたので仕方なくスマホを開く。


液晶画面に現れたのは、祖母からの連絡だった。

『なにかあつたのかい』

私は慌てて返信を打ち込む。

何かあったのかと聞きたかったのだろうけれど、スマホに不慣れな祖母は小さい文字を打てなかったのだろう。

連絡するのを忘れたことを申し訳なく思いながらも、ほっといてくれて良いのにとどこかで思っている私がいることは否定できなかった。

『ごめん、同じ学校の人とちょっと話してた。少し遅くなる。気にしないで』

『よかつた りようかいです』

取り敢えずスマホの電源を落とそうとした時、すぐに返信が現れる。

七菜香には勝てないけれど、ずっと見ていてくれたのだろう、かなりの速さだ。



──心配するような家族はいないから。




…馬鹿みたい。



「…そろそろ帰る」

祖母に対して非情な自分に流石に心が痛んで、今すぐ帰ることを選んだ。

どうせ、これ以上話すこともないだろう。


…あれ、週に一回これから会うんだっけ、、

話題に困る気しかしない…。

「今日は本当にありがとう。ごめんね、時間を取らせてしまって…」

家族に心配をかけてしまった、とか思っているのか知らないけれど、彼は今日何回目かわからない謝罪の言葉を並べた。

さすが王子様。

気遣いはもちろん、全てに神経を使って人の機嫌を損ねないようにしているのだろう。


ここまで優秀だと、ある意味怖い。

「土曜日は入り口の…えっと裏口の方のドアをノックしてくれれば開けるから。

急用とか、体調不良とか、来れない時は無理しないでね。バラしたりはしないから安心してください」



もう、言葉も出ない。

私が死んじゃっても気づくこと、ないじゃない。

全然交換条件になってないよ。




でも、やっぱり私が今まで七菜香に感じてきた「優しさ」とはどこか違う。

なんだか、自然さが桁違いで…。

徹底されているというか、身に染み付いているような感じ。