「うん、わかった。言わない」
「…は?」
あまりにもあっさりとした天沢の返事に、すぐには理解が追いつかない。
え、今…わかったって言った?
「…あれ?僕、変なこと言ったかな」
きょとんと首を傾げる天沢は、嘘を吐いているようには見えない。
純粋に本音を、本当の顔で口にしているようにしか…。
それが尚更、意味不明。
私は、小野さんのことがなければ、雨が降ったら死ぬつもりだったのに?
引き止めて欲しい気持ちは全くないけれど、彼のこれまでの言動からして、私が飛び降りることは簡単に許されることではないと思う。
「え、だって…良いの?あんた一人より他の連中がいた方が私も引き止めやすいでしょ」
目を丸くした私が、天沢の穏やかな瞳に映る。
彼は、少し口にするのを躊躇うように目線を下げてから、もう一度私を見つめた。
「…それはさ、無理矢理止めたことと変わらないかなって。まあ、僕も同じようなことしちゃったんだけれど…ごめんね」
天沢の今日二回目の謝罪に、私は返す言葉がない。
…助けてくれたのに、なんで謝るの?
あんたのことを命の恩人なんて絶対に思わないけれど…でも、謝ってなんて口が裂けても言えない。
人として悪いことは何一つしていないんだから。
「とにかく、僕は水瀬さんの見られたくない部分を見ちゃったわけだし…迷惑なのもわかって引き止めてこうやって呼び出して…」
天沢の切なさに満ちた声音にぎゅっと手を握る。
