もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「水瀬さん?」

鍵を開け終わった天沢が、振り返って不思議そうに私の名前を呼んだ。

輝かしい声で呼ばれた名前は、自分のものには思えないほどに美しい。

「何でもない」

「…そっか」

彼は、無理やり違和感を呑み込むかのように少しだけ動きを止めた後、いつも通り優しく微笑んだ。


なんか…偽りとか嘘とか、思えない。


勿論信じられるわけでも、ないけれど。


天才。

美少年。

頭脳明晰。

容姿端麗。



別世界の人間だってわかってる。


わかっているけれど。



でも、彼は…


今まで会った中の誰とも違う。





私は首を振って思考を遮る。

彼とは今日限りの付き合いだ。

どうでもいい。

口止めできればそれで。




「失礼します」

私の心の苦悩を何一つ知らない天沢の穏やかな声。

細くて繊細な美しい手によって、ドアノブが捻られる。

「…!」

現れた景色は、優しい色に満ちていた。


真っ白な壁に飾られた、桃色やラベンダー色の花々の絵。

部屋を照らす、淡い光を放った照明。

文字通りこれ以上はないと言い切れるほどにピカピカに磨かれたフローリング。

心地よく耳に響く、控えめに流れる聴いたことのない優しい音楽。

「…え?ここ、本当に裏口?」

あまりにも清潔に保たれている部屋に戸惑って、思わず声が漏れてしまう。

興味ないのに、と次の瞬間激しい後悔が身を襲ったが、天沢はやっぱりにこやかな笑みを浮かべるだけで。

私の口数が少し増えようが、減ろうが、何も気にしていないようだ。

「ちゃんと裏口だよ。ほら、お客さんもいないし」

確かに言われてみれば、客は誰一人いないし机も椅子もほんの数人分しかない。

でも、それにしては手が混んでいると思う。

個室としては充分な広さだし、外の声も全く壁を通していない。

さらに、床には美しい刺繍が目を惹く絨毯。

壁一面に飾られた景色の絵の数々。


なんとも言えない存在感を放っている、輝かしい高価な物たち。


なんだか、お金持ちの裕福な人専用にしか見えないんだけれど…。

「…別料金とか」

もしかしたら後々脅されるのではないかと恐怖心が勝って、さっきの後悔を塗りつぶすかのように質問を重ねる。

まあ、脅迫されるよりはマシなことだ。

用心に越したことはないだろう。