「水瀬さん」
真っ黒に染まった深い闇の中に、一筋の淡い光が刺す。
優しくて柔らかいのに、とても眩しくて芯の強い鮮烈な光。
その光は容赦なく闇を切り裂いて、私を照らした。
世界に色が戻っていく。
「…天沢」
「こんにちは」
天沢は、ふわりとさらさらの髪を揺らしながら微笑む。
お店の方向から来たということは、一度荷物だけ置いて迎えに来てくれたのだろうか。
…尚更、気が重すぎる。
ため息を吐きそうになったが、先に口を開いたのは天沢だった。
「ごめん、こんなところに呼び出して…。
急なお願いなのに、来てくれて本当にありがとう」
春の木漏れ日のように、温かくて柔らかい笑み。
天沢は、私がなかなか言い出せなかった『謝罪』と『感謝』の言葉を何でもないことのようにさらりと言った。
思ってないことをよくそんなに簡単に言えるね。
捻くれ者の私が心を掻き回して、乱していく。
何で私はこんなに馬鹿で、天沢は真逆なの?
私だって、あんたみたいに生まれてみたかった!
「やっぱり、嫌いっ」
彼の顔を見るのが嫌で、自分の足のつま先に言葉を吐き捨てた。
人の顔色を伺ってばっかりで。
私ができないことを、何でもないことのようにやってのけて。
誰からも好かれている人気者で。
何でもできる天才で。
凡人にも信じられないくらいに優しくて。
傷つけても、何も言い返してこなくて。
優等生で、王子様で、完璧なあんたが嫌い。
偽り?仮面?
くだらない。
馬鹿じゃないの?
皆が見ているのは、あんたが作った人形でしょ!?
誰も本当のあんたを見てやしないのに!
