学校に到着し、教室に入って席に着く。
までは良いものの…。
問題はどうやって天沢に伝えるか、だ。
何をしても相手が天沢なだけで、皆に注目されること間違いなし。
相談する人もいない。
…お手上げかも。
やっぱり…快晴だけど、今日死ぬしかなくない?
「あの、水瀬さん」
私は溢れそうになっていたため息を、慌てて呑み込む。
顔を上げると、そこにはここ数日良く目にしていた女子の姿があった。
「ああ、この前の…」
「えっと、私、小野 明梨(おの あかり)。その、ごめんなさいっ」
まずまず話しかけられることが予想外だったので、謝られたことに更に困惑する。
…ここ数日、意味わかんないことばっかりだ。
私は電車が混まない早朝に登校して本を読むのが日課なので、教室にはほとんど人がいない。
だけれど、やっぱり数人はクラス内にいるわけで、視線を感じる。
「…とにかくここはちょっと。教室の外に行っても良い?」
「そうだよね、ごめん気づかなくて」
誰にも聴かれたくなかったので、なんとか彼女を人の姿が見えない廊下に促す。
普通に話していても態度が悪いと言われる私は、出来るだけ穏やかな声色を意識して彼女に問いかけた。
「ごめんって何が?」
「金曜日のこと…いや、それだけじゃなくて、勝手に探って水瀬さんが望んでもいないことをして、本当にごめんなさいっ!」
深く頭を下げる小野さんに、私は頭が真っ白になった。
廊下の窓から吹く冷たい氷のような風。
教室から微かに聞こえる楽しそうな笑い声。
目の前で頭を下げる小柄な体の女の子。
私は何も見えていなかったんだ。
「…私、全然気にしてないから」
「本当…?」
恐る恐る顔を上げる小野さんに、私は頷く。
彼女は心底安堵した表情を浮かべて、ありがとう、と微笑んだ。
私は居た堪れない気持ちで一杯になる。
彼女は何も悪くないのに、謝らせて悩ませて、私は最低だ。
小野さんは何も悪くないよ、ありがとうってそう言わなきゃいけない。
それなのに、声が出ない。
後悔するってわかっているのに。
違う。
言えないんじゃない。
言うんだ。
