もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「寒くない?」

天沢の柔らかくて心地よい声が、天井を叩きつける雨の音と同時に耳に届く。

私はそんな綺麗な声に答える気が起こらなくて、小さく頷いた。

「これ、使ってないから…嫌じゃなければ、一応羽織っておいてもらっても良いかな…?」

彼はそれでも心が収まらなかったのか、バックの中の袋からタオルを取り出して、私に差し出した。

受け取る前に彼の手に視線が向く。

まるでハンドクリームのCMに出てきそうなほどに、整えられた爪と細い指。

こんな容姿で優しくされたら、世界中の9.5割以上の女子はときめいちゃうんだろうなぁ。

だが、当の本人は何故かとても申し訳なさそうにしている。

「何でそんな下から目線なわけ…?ありがたく使え、くらい言っても天沢なら許されるんじゃないの?」

「君の中の僕ってそんな感じなんだ」

天沢はくすりと爽やかな笑みを溢す。

私も釣られて心が軽くなった。

対話して笑って…そんなことを七菜香以外とできるなんて思わなかった。

私の最後の夢。


私は素直に、天沢の作り物のような手からタオルを受け取る。

肩から羽織うと、ふわふわで優しく甘い匂いがした。



──本当に夢を見ているみたい。



「それなら…七菜香のことも夢だったら良かったのに」

「ななかさん…?水瀬さんの知り合い…?」

私の心の嘆きは、無意識に外に漏れてしまっていたようだ。

七菜香と私の名前を呼ぶ温和な声に、心を揺さぶられる。



話すつもりなんてなかったのに。

特に天沢みたいな完璧な人間には。



「私は人間関係を築くのが、昔からずっと苦手だった」



私は語った。

この世界の大きさに比べれば、どんな塵よりも小さい、くだらない人生を。