もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

そこで初めて私は、彼が傘をさしていない事実に気がついた。

紺色のブレザーは、雨が隅々まで染み込んでいて深みのある色に。

シャツは体に纏わりついて、肌色が透けてしまっている。

かなりの水分を含んだ服はとても重そうだ。

何故こんな大雨の中、傘をさしていないのだろうか。

ブレザーの袖から見えるほっそりとした手には、しっかりと傘が握られているのに。

「もしも君がそのまま飛び降りていたら僕は後悔しても仕切れなかった…ごめん、やっぱり腕くらいは掴むべきだったね」

私が飛び降りてしまう瞬間を想像したのか、少し声を震わせる天沢。

私のくだらない一言に真剣に考慮して後悔して、謝って。

彼が何をどう考えて、私なんかに構うのか理解できる気がしなかった。

私とは住む世界が全く違う、正反対の人間だから。

──これ以上、話すべきじゃない。私のためにも、彼のためにも。