しばらく空を見上げていると、いきなり腕を軽く引かれた。
驚いて彼に視線を送ると、真剣な表情で見つめ返される。
いつもの穏やかな君とは違う。
でも、全然嫌な感じはしない。
寧ろ。
目が離せないくらいに、カッコいい。
「少し目を閉じてて」
君の透き通った声が、耳元で響いた。
「え、なにっ…」
甘い香りが、鼻をくすぐる。
「あまね」
雨と共に唇に降り注いだ君は、とても甘い味がした。
「好きだよ」
君の優しさに、甘さに溺れる。
どうやら、もう引き返せないらしい。
「これからもちゃんと君のそばにいるよって言う誓い。信じてくれる?」
目を逸らしたいのに、離せない。
だって綺麗だ。
優しく切なく儚く笑う君は、いつでも。
「雨音、顔真っ赤」
天沢がくすりと優しい笑みを浮かべる。
更に頰が熱くなるのがわかって、顔を逸らした。
「雨音雨音言うから!」
「いや…だった?」
こういうとき、健気な表情で首を傾げる天沢は本当に狡いと思う。
嫌なわけ、ないじゃん。
「…颯希くんはよくて、天沢がダメなのは。恥ずかしいからだから!…でも、天沢の名前好きだし。これからは善処する」
「やった、ありがと」
クラスメイトがこの無邪気な笑みを見たら、どうなるのだろうか。
いつもの天沢からは想像できない、私だけに見せてくれる特別な表情。
口約束よりも、ずっとずっと強いもので私たちは結ばれている。
ずっと、そばにいよう。
君が闇に囚われようが、雨に濡れようが、悲しみに溺れようが、ずっと隣に。
