「颯希と同じこと言ってる」
暗く静まった夜に、淡い光が灯る。
二人して病室のドアに目線を向けた。
「羽虹」
弾んだ声を上げると、隣で晴夏くんがものすごく嫌そうに顔を腕に沈めた。
羽虹はそれを見ても、特に気にすることなく近づいてくる。
やっぱり幼い頃からの付き合いだと、色々わかるものなのだろうか。
「颯希くんは?」
「千晴くん捕まえて立ち話してた。やっと友達に戻れて嬉しいんじゃないのかな。最近浮かれてるし」
初めて会った時、颯希くんのイメージは『素直で一生懸命な少年』で明らかに大人びた雰囲気を感じた。
でも天沢と一緒にいる時の颯希くんは、まるで兄に構って欲しい弟みたいで微笑ましい。
「颯希が、今さっき晴夏くんと同じこと言ってたの。『無理して付き合う必要ない』って」
話が軸に戻される。
羽虹の至って穏やかな雰囲気とは一転して、晴夏くんの表情は険しい。
「千晴くん、やっぱり颯希は優しいね、ありがとうって微笑んで。『大丈夫。迷ったら、水瀬さんのところに行くから』って言ってたよ」
「…え」
間抜けな顔でぽかんと口を開く私を横目に、晴夏くんが頬を膨らませる。
私はうるさい心臓を落ち着けながら、言葉を探した。
「私も、天沢に沢山相談したし…」
慌てて誤魔化すが、二人は私の気持ちなんてお見通しなようだ。
羽虹にはくすくすと笑われて、晴夏くんには睨まれてしまった。
