もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい


「…、一つ頼み事」

「え、私?」

「他に誰が居るんだよ」

呆れた声音は、どこか優しさを含んでいて温かかった。

やっぱり晴夏くんは天沢の弟なんだな、と思う。

「…父さんはいつも兄さんを褒めてばかりいた。

あの日も自分が兄さんを痛めつけていたと知って信じられない顔をしていたし、酷く自分を責めていた。

悪い人じゃないんだ。兄さんを心から自慢に思ってた」

いきなり声色が変わる。

苦痛に歪んだ、か弱い音色。

あの日の天沢を連想させるそれは、酷く哀しかった。

「…ここまで庇っておいてなんだけど。だからと言って、父さんが兄さんにしたことは許されるわけがないと思う。

兄さんが感じた痛みは消えない。どれだけ水瀬が傷を癒したとしても」

本当に彼は私より年下なのだろうか。

そのくらい、思考の海が深くて広い。

そして、冷たく哀しい。

「…だから。兄さんが無理して父さんと関わる必要、ないんだ。許しちゃ、ダメなんだ」

ぐっと晴夏くんがベッドのシーツを掴む。

否定はできなかった。

その通りだし、彼が苦しみのをこれ以上見たくはない。

でも、何故か肯定も出来なかった。

「天沢は必死だよ。辛いけど、前に進もうとして」

「…わかってる、でも絶対無理してるだろ」

ぐっと言葉に詰まる。

そう言われるとやはり否定できない。

実質天沢は知らぬうちに自分を追い詰めてるし、常に寝不足で疲れ気味だ。

それを決して表に出さないだけで。

晴夏くんの気持ちは痛いほどわかる。