もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい






「毎週毎週、こんなところによく来るね…」

小さなため息が、部屋に籠る。

「晴夏、今日は羽虹と颯希も来るって」

「家遠いくせに…、意味不明だな…」

晴夏くんは読んでいた本を棚に直すと、机に頬杖を付いて目を閉じた。

天沢から柔らかさを取って、クールさを加えたみたいな少年。

でも、流石兄弟と言ったところか。

雰囲気は違えど、容姿は天沢と同じく驚くほど整っている。

「水瀬もこんなとこ来て楽しいわけ?」

「どうせ帰り道だし」

この二ヶ月間、ちょくちょく通っていたのでだいぶ打ち解けた…はずだ。

だが、天沢とは全然感情表現の仕方が違うので、戸惑うことも多々ある。

まあ、天沢が兄として晴夏くんと話しているのを見るのが単純に楽しいので、これからもお邪魔させてもらおうと思う。

「じゃあ、皆の分飲み物でも買ってくるね。水瀬さん、ゆっくりしてて」

「ありがと」

天沢は本当に気が利く。

手伝いたいところだが、晴夏くんを一人にするわけには行かないし、任せようと思う。

ふっと頬を緩めていると、晴夏くんの鋭い視線が私に向いていることに気づいた。

「…兄さん、本当にモテるね」

ぎくっとぎこちない表情で身を引く。

だが、言い当てた本人はさほど興味もなさそうにまた瞼を閉じた。

「まあどうでもいいけど。好きに告白して付き合うといいよ。水瀬なら兄さんもいいんじゃないの」

「え、いいの?」

絶対に反対されると思っていたので、意外に優しい言葉に開いた口が塞がらない。

「なんで僕が反対するんだよ。兄さんが決めることだろ。
水瀬を連れてきたとき、やっと彼女できたのか、って思ったくらいだし。違ったけどね」

「だって晴夏くん、天沢大好きでしょ?こんなんに任せていいのかなーなんて」

何気なく選んだ言葉だったのだが、晴夏くんはみるみるうちに赤くになって布団を頭から被ってしまった。

まさしくツンデレそのもので、ふっと吹き出しそうになる。

本気で殺されそうなので、流石に抑えたけれど。

「…好きだから良いんだよ」

「ん、そうだね」

しばらく窓の外を見つめていた。

今日は雲一つない快晴だ。

君の心も晴れているかな?

そうだと良いな。