もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

しばらく虚空を静かに見つめていた。

後悔はなかった。

ただ、雨の音を最後にゆっくり聞きたかっただけで。

大っ嫌いな名前だけれど、自分にとてもピッタリだから。


ああ、本や映画ではここに立っているのは私みたいな惨めな人じゃないんだろうなぁ。

七菜香みたいに可愛くて優しくて…誰にでも好かれるヒロイン。

そんな人が死にたいなんて思うわけないのに。

所詮、空想だ。馬鹿みたい。




屋上から片足を差し出す。



恐怖は感じなかった。



ただ、やっぱり最後に頭に浮かんだのは可愛くて優しい彼女の微笑みだった。



「さよなら、七菜香。…ありがとう」