雨が、少しだけ弱まる。
声は掻き消されることなく、反響した。
「痴がましいって、わかってるけど。でも、天沢が傷ついてばかりなのは、嫌だよ。
天沢がいない世界は、もっと嫌だよ」
せっかく雨が弱まってくれたのに、声が掠れる。
でも、言葉を止めはしなかった。
涙声でも、伝えたい。
「忘れて、なんて…、、無理に決まってるでしょっ…!この一週間…ううん、天沢と出会ってからの半年間、どれだけ天沢のこと考えてきたと思ってるの?どれだけ感謝してると思ってるの?どれだけ一緒にいたいって、願ったと思ってるの?」
こっちを向いて。
その瞳に私を映して。
どこにも、行かないでよ。
「助けてくれたくせに…っ!たくさん優しい言葉をくれて、甘い笑みを見せてくれたくせに…っ!いつでも天沢は私の光だった!
天沢がいたから、この世界で生きたいと思えたっ!
…それ、なのにっ!私を置いていかないでよ!ばかっ!!」
笑顔も、幸せも、心も、全部全部。
君に、あげる。
だから。
君の痛みを、苦しみを、涙を。
私にください。
「絶対、離さないからっ!狡くても、卑怯でも、何でもいい!天沢を引き留めるためなら、どんなこともするんだからっ!」
君は私を無理やり引き留めたりせずに、優しく心を癒してくれたけれど。
私はどんな手でも使う。
君と一緒に時間を歩めるのなら。
「行かないでっ…!もう、さよならなんて言わないでっ!一緒にいたいよ…っ、」
足が、声が、心が、震える。
でも、もう迷わない。
息を吸う。
「君に全てをあげる」
この想い。
どうか、届いて。
