もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい







自分の吐息が、足音が、うるさい。



足が重くて、頭が痛くて、喉の奥が焼けそうだ。



「どうか、間に合って…っ」



それだけを、切実に願う。



乱れた息のまま、傘を閉じて電車に飛び乗る。

止まっている時間がもどかしくて仕方がないけれど、四十分間全力で走れるわけないし、走ったとしても電車の方が早いだろう。

この雨の中、体力が持つとは到底思えない。



居ても立っても居られない気持ちで、ひたすら時間が過ぎるのを待った。

でも、四十分。

待つだけには長過ぎる。



鞄から、一冊のノートを取り出す。

シンプルな表紙を捲ると、パソコンで打った字と区別がつかないくらいに乱れの一つもない字で文章が綴られている。

先生別のテストの特徴とか、出題率が高そうな問題とか、先生の会話からの予想とか。

彼の几帳面で、真面目で、丁寧な性格がそのまま表れている。

どれだけ時間がかかったのだろうか。

五時間は容易いだろうし、忙しい彼なら尚更時間は惜しいものだろう。

彼の大事な時間を奪ってしまった。

もっとお礼を言っておけば良かった。



申し訳ない。

濃い、後悔の味がした。



でも同時に、すごく嬉しくて。

大切で、愛おしくて、仕方がない。




天沢のためなら、私の時間なんて全部あげる。

彼のためなら、どんなに暗い闇の中にだって容赦なく飛び込める。



強く、強く、私はノートを抱き締めた。


あの日握った、彼の手を思い出しながら。