「…颯希くん、羽虹。まだ知っていること、ある?教えて欲しいの。知りたい」
スマホと傘を拾う。
雨に掻き消されないように、はっきりと言葉を綴った。
「天沢を助けたいから」
今、出来ること。
全部を試すまで、絶望に打ちのめされる資格なんてない。
『…颯希、私も…雨音の力になりたいから。私が、話したい。それでもいい?』
『…雨音なら、千晴も許すと思うから。俺は上手く話せる自信がない。頼む』
羽虹が電話の向こうで、息を吸うのがわかる。
焦りも、もどかしさも、全部呑み込んでスマホの向こうの声へ耳を澄ます。
『千晴くんのね、お母さんから話を聞いたから。それを、伝えようと思う。
…晴夏くんを見つけたのは、千晴くんだったらしいの。
体調が悪化した晴夏くんにずっとずっと付きっきりでそばにいて、少し容態が落ち着いてきたからほっとしていつの間にか眠ってて』
──ごめんいけない
虚無感に包まれた彼のメッセージ。
あの時。
彼は誰かに弱音を吐くこともできずに、静かに祈り続けていた。
今更になって、思う。
電話をかければ良かった。
もっと早く、弱音を引き出そうとしていれば良かった。
彼の気を許せる人に、なれれば良かったのに、と。
