「逃がさない、か。しっかり捕まえてこいよ」
「…任せてください」
プリントを受け取って、大きめの封筒に収納する。
雨が強いので濡れないように、鞄に直した。
真昼間な筈なのに、空はまるで夜の海のように暗い色をしている。
「それでは、失礼します」
「水瀬。千晴を、頼んだぞ」
「はい」
パシャリとドアを閉めた瞬間、私の心はもうそこにはなくなっていた。
今は、君のことだけ考えていたい。
廊下を、走った。
雨は降り始めたばかりだったので、滑らなかったのが不幸中の幸いだ。
天沢、天沢、天沢。
君も、どこかでこの空を見ていますか?
暗くて、冷たくて、寂しくて。
どんよりと曇った、悲しいこの空を。
この空は、君の心そのものなのかもしれない。
少なくとも、あの日。
君が私を助けてくれたあの日の空は、私の心と繋がっていた。
そして、突如現れた君は太陽だった。
私は、太陽にはなれない。
でも、月光くらいにはなれるだろうか。
太陽の光を受けて輝く、仄かな光くらいには。
