会議室っていうのは、どうも緊張する。
殺風景だし、壁は真っ白だし、飾り気一つない。
増して、先生と二人きりなんて。
「先生、天沢から伝言って何ですか」
気まずさ故に早々に話を切り出したのだが、返ってきた答えは求めていたものではなかった。
「昨日、颯希と話してただろ」
「え、まあ…それが何か?」
急に颯希くんの名前を出されるもんだから、素の、感じの悪さが出てきてしまう。
先生は気にしていないようだけれど。
「颯希と千晴が一年の頃、バド部に入って結構有名になっただろ」
「えっと…そう、ですね」
こんな言い方をすると言うことは、校内でもかなり有名だったのだろう。
県大会優勝ともなれば、当然のことだ。
友達一人すらいなくて、スポーツになんの興味もなかった私の頭にそんな記憶は一切ないのだけど。
だが、颯希くんから昨日聞きました、なんて言えるはずもなく、ただ順従に頷く。
「だが…まあ、いざこざがあって二人とも辞めてしまってな。今に至るわけだ。
俺は顧問だったのに、問題のことを知ったのは退部届を提出されて二人が部活を去った後でな。本当に不甲斐ない」
「…先生のせいじゃありませんよ。二人とも、誰にもに気づかれたくなかったと思うので。
問題に介入するより、ずっと良いです。二人が選んだ道なんですから。それがたとえ、茨の道でも」
私がはっきりと言うと、先生はそうだな、と力なく笑った。
「…俺が何かをしてたとえ上手く解決したとしても、発された言葉は消えないからな。でも…気づけなかったのはやっぱり悔しかったんだ。
…だから、先週の金曜日に千晴と二人きりになった時。悪かったって謝ったんだよ。
謝るのもどうかと思って、この約一年迷走してたんだが…どうも謝らずにはいられなくてな」
自分自身を情けないと非難するみたいに、萎んだ先生の声。
呼吸もせずに続きの言葉を待つ。
天沢は謝られてなんと答えたんだろう。
「…千晴は静かに首を振って、俺に伝言を告げた。
『颯希に伝えてくれませんか。
あの半年間はかけがえのないものだった。ありがとう。楽しかったよ。って。
こんなこと頼んで申し訳ないんですけれど』
そう、千晴はどこか上の空で微笑んでいた。なんだか尋常じゃないほどの違和感を感じたよ」
不穏な空気に胸がざわつく。
天沢はなんで休んでいるんだろう。
颯希くんの話を聴いて、なんとなく弟の体調が悪化したのではないかと思っていたけれど、あまりにも長すぎる。
そんなに悪いのだろうか。
その前にも彼は休んだし、思っていたよりもずっとずっと重い重い病気なのかもしれない。
弟の命の灯火が消えたら…天沢はどうする?
