「…私が天沢の特別なら、それ以上嬉しいことはないよ。でも、仲が良いからこそ言えないことってあると思うの。私もちょっと悔しいけど、安東くんのこと話してる天沢はすっごく嬉しそうだったもん」
「…まじか」
安東くんは唖然としつつも、嬉しさと羞恥心が入り混じった表情を浮かべた。
微笑ましいが、和んでいる場合ではない。
「もうやめよ、互いに落ち込むの!どっちが天沢の一番とか、ないよね。二人とも天沢を助けたいんだからそれで十分でしょ?」
「…そうだな、よし!」
安東くんが声音を明るく力強いものに変える。
勇気を貰える、希望に満ちた声はとても安心感があった。
「明日、待ってるな」
「うん。新しい私になって、行くよ」
天沢、待ってて。
必ず会いに行く。
君がくれた勇気は、君を助けるためだけに使わせてもらうね。
──ねえ、空は好き?
あの日の天沢のように、今度は私が君を救えるかな?
君のおかげで幸せを知った。
他人を思いやる優しさを知った。
誰かの笑顔が眩しいことを知った。
無駄なことなんてないと知った。
──雨の音で、雨音って落ち着いてる感じがするし、響きが綺麗。
雨を、この名前を、好きになった。
「そうだ、“颯希くん”
──『雨音』って呼んでくれる?」