もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「…わかった。終わったら来て欲しい。病院の場所は教えるから」

安東くんは私のあやふやすぎる発言に対して何かを追求することはなく、静かに頷いた。

ほっと安堵していると、過去の自分の発言が頭をよぎる。

「…そういえば、私…待ってるって言っちゃった。
天沢に…私と会えなくなったとしても、必ず戻ってくるから、待っててくれる?って聞かれて…今、会いたくないと思われてるかも」

彼の酷く不安げな、弱々しい声が鼓膜に谺する。

あれは『知られたくない』という心の表れではないだろうか。

それなら、やっぱり…天沢の言葉を信じて待っているのが一番なのかもしれない。

…でも、もしも何かが彼を追い詰めているのなら、助けたい。

その気持ちは捨てられるほど軽いものではない。



…どうすればいいの?

全然、わからないよ。



「…え?待っててくれる?って言われた?」

「えー!?あの千晴くんが!?」

安東くんが鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべたかと思うと、さっきまで静かに私たちの会話を聞いていた妃里さんまで大きな声を上げた。

私は何が何だか理解できなくて、ぱちくりと瞬きを繰り返す。

「…えっと?」

「…あー、うん。えっと、千晴が詮索されたくないと思ってるかもしれない、ていうのは俺もわかるから。あくまでも、俺と羽虹は誕生日プレゼントを渡しに行くだけ。で、ちょっと様子見れればなーって」

「…なるほど。それはありだ」

誕生日を祝いに行くのは、友達として普通のことだ。

天沢の触れられたくない部分に触れることなく、彼の様子を確かめられる。

私はうんうん、と頷いていると、それにしても…と安東くんが意外そうに呟いた。

「…俺、千晴に待ってて、とかこれして、とか頼まれたことないんだけど。強いて言うなら、羽虹のことお願いされたくらい。

先生に引き留められたときも、告白に呼び出されたときも、先行ってての一点張りだったのに…」

「そうよね、千晴くんそういう子よね。バイトだって何が何でも休みたがらないし、サービスでお給料アップしても丁寧に返却されちゃうもの」

「わかります!待ち合わせ、三十分前から来ているようなバカ真面目ですから」

三人で真面目な顔をして見つめ合っていたのはほんの一瞬で、気づけば皆揃って吹き出していた。

なんだか楽しくて、嬉しくて、温かくて、居心地が良くて仕方がない。

天沢の近くにいる人は、優しい人ばかりだ。