「そう、だな。俺も…千晴にちゃんと思いをぶつけて…もう一度、笑顔が見たい」
「うん」
安東くんの瞳が、強く燃えているように見えた。
私、変わらなきゃ。
大丈夫、天沢が教えてくれた。
変わる方法を。
誰かのために行動することの美しさを。
私は変われるよ。絶対に。
「二人とも、どーぞ」
コトリとテーブルに置かれた上品なコップと、華やかなケーキで彩られたお皿。
そういえば、天沢とケーキを奢り合ったっけ。
つい最近のことなのに、だいぶ昔のことみたいに思える。
「…これもね、千晴くんが考えたの。晴夏くんも協力してくれてて、天沢兄弟はこのお店の核なのよ」
「…いただきます」
口にケーキを運ぶと、甘くて優しい味が口いっぱいに広がる。
口当たりはふんわりと柔らかくて、まるで天沢みたいだった。
──水瀬さん
「ありがとうございます…。美味しいです」
「…良かった」
頬から雫が滴るのがわかる。
天沢に会いたい。とてつもなく会いたい。
だから。
泣いているだけじゃ、だめだ。
前へ進まなきゃ。
「…水瀬さん。今日を選んだのにはわけがあるんだ」
安東くんが私を気遣うように、柔和な微笑みを浮かべる。
天沢に似ている、優しい雰囲気を纏った笑み。
なんだろう、と私は手の甲で涙を拭った。
「今日、七月六日だろ?明日、千晴の誕生日なんだ。七夕の日」
「天沢の…誕生日」
七夕が誕生日。
ぴったりだ。
空が、星が、大好きな彼に。
