「え、七菜香…どうしたの…?」

心臓が嫌な音を立てる。

これ以上ないくらいに早く脈打つ鼓動に、頭がどうにかなってしまうそうだった。

『水瀬って頭は良いけど、そういうところはダメだよねー。騙されやすすぎ』

どんどん体から熱が奪われていく。

足が立っていられないくらいに震えて、崩れ落ちてしまいそうだ。

『貴方は私のことをさ、中学の初めに上靴とか教科書とか無くなって、困っている自分を助けてくれたーみたいに思ってるでしょ?
それで私に助けられてから虐めはピタッと止んでやっぱりすごいなぁって。

あはは、面白い。ぜーんぶ私がしてあげたのにねぇ』

もう声も出せなかった。

七菜香は…私なんかを見てはいなかった。

私を、友達ともなんとも思ってはいなかった。

ただの道具、だったんだ。

その事実が、もう…さっきまでは何も入って来なかったのに、すっと心に刺さってしまった。