もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい


「…素直、か。そうだな。水瀬さん、色々ありがとう」

「えっ?私、別に…いや、うん。どういたしまして」

全く説得力のない返しをしそうになってしまって、慌てて言葉を呑み込む。

安東くんにはくすりと笑われてしまったけれど、嫌な感じはしなかった。



「…ねえ、妃里さんと話に来たわけじゃないってことは、なんでお店に?」

安東くんの表情が少しだけ固いものへと変化する。

でも、聞かなくてはならないことだと思ったから私は彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。


穏やかな時間は、落ち着くけれど…それでも、私の心の中心には天沢がいるから。

立ち止まっているわけにはいかない。

「…うーん、二人で話せるならぶっちゃけどこでも良かったんだけど。

千晴のこと、多分俺あんまり知らないんだよな。近いのに、遠いっつーか。だから、少しでも近づくため、かも。わかりにくいと思うけど。上手くいえない、悪い」

「…ううん、わかるよ」

私は少しだけ迷って、彼の意見に肯定の意を示す。

今の私は逆かもしれない。

天沢は隣にはいないし、増してどこにいるかもわからないのに、彼は私の隣にいるように感じるから。



数ヶ月前の私なら、即答していたと思う。

私も、近くて遠いと感じる友達と一緒にいたから。

七菜香は優しかったし、誰かの悪口だって口にすることはなくて、私は彼女の隣が大好きだった。

でも、どれだけ長い時間を共にしても、彼女との距離が縮まったという確信を持てる日は来なかった。


あの頃の私は、彼女とは何もかも違うからしょうがないってそう思っていた。

クラスの中心の七菜香と、虐めに怯える埃のような私。

近づけるわけがないって。


でも、もしかしたら。

彼女が私に心を開く気が、一切なかったからかもしれない。


それを悟っていたから、嫌われているってなんとなく感じていたから、立ち直れたのかな、なんて今は思う。

もちろん、天沢の言葉があってこそだけれど。