もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「今日は二人の貸切」

「え、どういうことですか!?」

安東くんが顔色を変える。

状況についていけない私は、存在を消しつつ二人の状況を見守ることにした。

「颯希くんが今日、お店に来るって言ってくれたから。私も千晴くんのこと気になってたし」

「そ、それで貸切ですか!?お店の経営とか、そういうの…」

学年二位の実力か、頭の回転が早い安東くんは顔を真っ青にする。

妃里さん優しい、と楽観的な私とは違って、金銭的な問題やお店のやりくりを心配しているのだろう。

確かに、売上額が多そうな午後の時間帯の貸切は、かなりのダメージなのではないだろうか。

「大丈夫、子供が心配することじゃないわ。それに、二人と話がしたいなって思ってたから。

これでも一応店長だし、お店があったらゆっくり話す、ってわけにはどうにもいかないしね」

優しく微笑む妃里さんだけど、まだ納得がいかないのか、戸惑いの表情を浮かべる安東くん。

妃里さんは説得を諦めたのか、いいから座って、と私たちを席へと促した。

「二人とも、苦手なものとかある?」

「いえ、別に…」

「ちょっと待っててね」

妃里さんは同時に首を振る私たちに満面の笑みを見せると、棚に置いてあったエプロンを手に取ってキッチンに姿を消した。

どうやら、何か用意してもらうことになってしまったらしい。

安東くんは「あ」と彼女の後ろ姿に手を伸ばすが、すでに手遅れだった。

「そんなつもりで連絡したんじゃねーのに…、これじゃ商売の邪魔だ」

「お金とか、そういう形のあるものじゃなくてさ、妃里さんの今回の行動の原動力は『安東くんのため』でしょ?取り消せないことは素直にありがとう、でいいんじゃないかな」

安東くんがぽかんと意外そうに私を見つめる。

言葉に後悔はない。本心だ。

きっと天沢なら少し戸惑った後、ありがとうって言って笑うから。


私は変わった。

数ヶ月前の私に素直さなんて、一握りどころかひとつまみもなかったから。

天沢に、出会えて良かった。


そう心から思える。

それがまた、幸せだ。