『そんなわけないよ!私は雨音が大切だから一緒にいるの!雨音は私の心の支えなんだから』

冷え切った土地に日光が降り注ぎ、雪解けが始まる。

雪の下から、淡い桃色の花びらが舞い上がった。

ふわりと、優しい香りと温もりが身も心も包む。

「っ、七菜香…っ」

安心して思わず道端に座り込みそうになってしまった。

七菜香だけは、私を大事に思ってくれる。

やっぱり彼女の隣は私の唯一の居場所なんだ。

彼女の優しさに、今度こそ溢れそうになった涙。

それを再び必死に抑え、本当に伝えなければならないことを口にする。

「あのね、七菜香…ごめんね、私クラスの子に七菜香の裏アカ見つけた、とか言う嘘つかれて一瞬疑っちゃったの。

七菜香は私にこんなに優しくしてくれているのに…。最低、本当にごめん…」

『もー雨音は正直者だなぁ…そりゃあ誰でも一瞬は疑っちゃうでしょ、全然良いよ。そういう隠し事をできないところも、私はすっごい好きだもん』

七菜香の気にしていない様子に、ようやく頬に涙が伝っていく。

彼女を疑った自分が本当に情けない。

良かった…っ、私の世界はまだ…終わらない。

「ありがとう、七菜香。私も七菜香がす…」




先程花弁を開いたばかりの花が、風にさらわれ、無惨に散った。




──終わらないものなどない。


今世に至るまで、何万人の人々が同じ言葉を重ねたのだろう。



『はあ…、で?この茶番はいつまで続ければ良い?』