もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「私ね、ここの店長してるの。千晴くんから水瀬さんのことよく聞いてて。今日もいるのかなーって」

「え、店長…ですか?」

何もかもしっくりこなくて、とりあえず彼女の言葉を反芻した。

彼女は目をパチクリと瞬かせて、ああ、と頷く。

どうやら彼女の中では、パズルのピースが組み合わさったらしい。

「あー、私こう見えても二十三歳なの」

「えぇっ!?」

どう見てもギリギリ十九歳に見えるか否か、くらいだ。

とても成人しているようには見えない。

でも、すぐに失礼な発言をしてしまったことを後悔した。

「ごめんなさいっ、その…」

「いいのいいの。若く見えるってことでしょ?寧ろありがと」

優しげに微笑む女の子…ではなく、女性に私はほっと安堵した。

どうやら悪い人ではないらしい。

ていうか聞き逃してしまったけれど、ここの店長とおっしゃっていたことだし、天沢とかなり接点のある人なのでは?

「あの、えっと…名前を教えて頂いても…」

天沢のことを何か知っているか尋ねようと思ったのだけれど、名前がわからないと何かと不便だ。

ひとまずそれを優先することにした。

「あ、言ってなかったね。私は胡桃 妃里(くるみ ゆり)。妃里でいいよ。よろしくね」

「あ、はい。よろしくお願いします。妃里さん」

軽く頭を下げると立ち話もなんだし、と言われた。

さっきまでずっと開くことのなかった扉を、妃里さんがポーチから鍵を取り出して開放する。

やっぱり部屋の中には誰もいなくて、気持ちがどん底に沈んでしまった。

あんなにいつもは明るかった部屋が、天沢という光がいないだけで冷たく暗く感じる。

酷く寂しい。

「千晴くんったらすごいよね。こんなの作っちゃうんだもん。しかもここにある分だけじゃないんだよ?
お店の方のレイアウトもしてくれてるの。メニュー表とか、もうすっごくお洒落なんだから」

明るい声を聴いていると、少しだけ気持ちが楽になる。

でも、それは私だけだ。

天沢の心は救われない。