もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい


シトシトと地面に降りていく雨はそんなに酷くはなくて、まるで誰かの涙のようだ。

私はドアにもたれかかって、静かに空を見上げていた。




しばらくしても音沙汰がないので、さっきと同じようにドアをノックした。

でも、帰ってきたのは沈黙だけ。

中には誰もいないようだ。



十分ほど前にいつも通りあのお店に来たのだが、ドアをノックしても反応は全くなかった。

いつも早くから待っていて、待ち合わせに遅れるなんてありえない彼。

不審に感じながらも、まだ待ち合わせまで十分ほどあったのでひとまず待ってみることにした。

そして、十分経った今。

天沢が姿を現すことはやはりない。



こんなこと思いたくない。

でも、何かあったとしか考えられない状況。

寝坊…は、絶対ないし。

風邪だったら、無理してでも来るだろうし…。

いや、…天沢本人のことじゃない?



「…貴方が水瀬雨音さん?」

「えっ?」

真っ白い上品な傘に、栗色の緩やかなウェーブ、そしてクリっとした大きな瞳。

可愛いらしい声の主は、私より一つ二つほど年上に見える、可憐な女子だった。

「えっと、そうですけど…」

名前を知られていることに疑問を持ちながらも、その答えを知るために正直に頷く。

女の子は、愛嬌のある顔をやっぱり?と綻ばせた。

…天沢の元カノとか?

あまりの可愛さに、変な勘が働く。

天沢の美しさには敵わないが、かなり目立つ容姿をしているし、柔らかい雰囲気も天沢に合いそうだ。

自分で勝手に思ったことなのに、何故だか胸がざわついた。