もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「天沢、体調大丈夫なの?顔色悪いけど…」

どうして昨日休んだの?

何があったのか、教えて?


そんな思いを込めて、慎重に選んだ言葉だった。


直接聞けば、絶対に彼は答えてくれる。

だけど、それじゃ何も変わらない。

彼の、弱音を吐ける場所にはなれない。



だから、聞かないし、聞けない。



でも、やっぱり気にせずにはいられないから。



彼が話したいのなら、話せるように。

まだ胸の内に秘めておきたいのなら、言わなくていいように。


彼の意思を確かめるために。


そんな思いから、あやふやに言葉を濁した。


「…寝不足なだけ。本当だよ。ちょっと貧血気味なくらいで、少ししたら治るから。大丈夫。気にしないで」

天沢はこれ以上詮索されたくはない、とは決して言わなかったけれど、それを表すかのようにまた静かに微笑んだ。


狡い。

本音を混ぜた嘘は、暴くのが難しい。

それを分かっていて、彼はあえて少しだけ弱味を見せたんだろう。



はっきりとした詮索の拒絶。

辛いけれど、痛いけれど、でもそれが彼の本音なら。

今は、まだ。


「…ねえ、天沢。私、信じてる」


不安を呑み込んで出来る限り優しい表情を浮かべる。

天沢は罪悪感の現れか、酷く歪んだ表情を俯いて隠した。


珍しい姿だと思った。

自分から逃げるように、君が目を背けたから。


「…天沢のこと、信じてるから」


ねえ、天沢。顔を上げて。


君と同じ空間にいるのに目が合わない瞬間ほど、もどかしい時間はないから。


その鮮やかで繊細な瞳に、私を映して。


「始めはね、信じられるわけないって思ってた。でも、天沢がずっとそばにいてくれて、私に時間をくれて、このままじゃいけないってそう思った。

だんだんと、信じなきゃ、って思いが信じたい、って気持ちに変わっていって…」

気づけば彼の双眸は、しっかりと私を捉えていた。

「…今は、信じてるの。心から強く、強く」


君は、『特別』な人間だ。

誰もが目を奪われ、手を伸ばしてしまうほどに眩い光。

私とは正反対な、全てにおいて完璧な君。


そんな大っ嫌いなはずの君が、私の『特別』になったのはいつかな。



それは、きっと──





──ねえ、空は好き?






出会った、あの日から。

全ては、あの瞬間から始まってたんだよ。