もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

言いたい。

彼を救う言葉を、何でも良いから。

でも、わからない。

どんな言葉だったら彼の心に届くのだろう。

『天沢は悪くないよ』

『誰も天沢を責めたりしないから』

『お父さんだって、天沢がそんな顔するの望んでないよ』

どんな言葉も、今の彼には届かない気がした。

謝意と後悔と自虐に頑なに覆われた心には。




視界がだんだんと、雲の中にいるみたいにぼやけてきた。

一雫の雨が降ると、もうそれは止めようがなく、雨足はどんどん強くなっていく。


私が泣いちゃいけないのに。


天沢の辛さに寄り添えない自分が惨めで仕方がなくて、とどめなく溢れる涙が抑えられない。


「水瀬さん、ごめん。泣かせるつもりじゃなかったんだ…ごめん」

私の涙に、天沢が一瞬で上の空から現実に戻ってきた。

失った何かを取り戻した、いつもの天沢。



私は普段通りの彼の姿に安堵してしまった。

彼の辛さを受け止めるつもりで教えて欲しい、と言ったのに。

いざとなったら、真実が怖いんだ。




過去を言葉で綴って、辛い思いをしているのは天沢なのに。

その彼に涙を見せて謝られるなんて、私は何がしたいのだろう。


「天沢は悪くないの。謝らないで…天沢の苦しみに寄り添えないのが、嫌なの。馬鹿みたいな理由でごめんね、泣きたいのは天沢なのに…」

情けない。

私は何で人のために何かをしようとしても、全く上手くいかないんだろうか。

後悔してばかりで、どんどん自分に対する嫌悪感が増していく。

誰かを、天沢を、幸せな気持ちに浸らせてあげたいだけなのに。

恩返しをしたいだけなのに。

どうして、それだけのことができないの?