もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「僕の父さんは自殺だった」

突如知らされた事実に、完全に思考が停止した。

感情の色が消えて、混ざりけのない透明になる。

「その時、周りの人々は口を揃えて言ったんだ。“可哀想、弟が病気で大変な思いをしたんだろう”って」

天沢は遠い過去を思い出しているのか、星空に目を向けながら語った。

確かに空を見ているのに、虚な瞳は星を透過しているように感じた。

「…許せなかった。父さんが弟のせいで追い詰められていたのか、今となっては確かめようがないけれど、、理由は何にせよ、父さんの辛さに気づけなかった自分が…、許せなかった。

弟の痛みを、孤独を、苦悩を知らずに、晴夏を責める人々も。

簡単に同情して、勝手に父さんの辛さを決めつけて言葉にする人も。

嫌で嫌で仕方がなかったけれど。

やっぱり、自分自身が何より許せなかった」

自殺した父親。

虚弱な弟。

弟を責める人々。

自分を許せない彼。


少しずつ、困惑していた脳で点と点が繋がっていく。




──ああ、無理だ。


私は彼を支えられない。


私には、こんな深い悲しみを理解できるほどの辛さを味わった経験などないのだから。



友達に裏切られ、家族に相手にされなかった?

悩みと言えるかも怪しい私の話を、彼はどんな気持ちで聞いていたのだろう。

家族のことで必死に苦しみ抜いて今を生きている彼は、私の家族について聞いた時、何を思ったんだろう。


「…心からの言葉だって、あったはずなのに。僕はその言葉をもう覚えていないんだ。

あの頃は…自分のことで精一杯で、本当のことかわからない言葉なんて、早く忘れたいと願っていたから。

父さんも助けられずに、人の言葉も忘れてしまった僕は、何がしたかったんだろうね」

彼はいつもの調子でゆっくりと微笑んだ。

その瞳は私に向いているのに、やっぱり私を見てはいない。