もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

しばらく言葉なしに空を眺めていると、すっと一筋の光が夜の海を走り去る。

「あ、流れ星、、え、初めて見たー!」

「たしかに。思ったより速いね」

天沢は空が好きと言っていた通り、嬉々とした表情で星を見つめていた。

暗くてぼんやりとしか見えないけれど、相変わらず横顔のラインさえ美しい。

「こんなに速いんじゃ、願い事三回も言えないね」

話の流れで特に意味のない言葉だった。

それなのに、彼はすっと笑みを消して星空に手を伸ばした。

「…水瀬さんは、もしも願いが叶うなら何を願う?」

力のない声は、私を迷わせる。

しばらく思考を練って、ふと思い出したのは羽虹との会話だった。


──その、千晴くんの本音…引き出して、あげてね。雨音だからこそ、できることだと思うから。

──天沢の本音、いつか必ず引き出して見せる!


「…願い、って言われても簡単には思いつかないけれど…、今一番したいことって言ったら、天沢のこと知りたいな」

「え、僕…?」

天沢は心底不思議そうに、ぱちくりと瞬きを繰り返す。

綺麗な二重と長い睫毛に覆われた瞳は、夜色を映していた。

「…その、なんでもいいから、天沢のこと聞かせて欲しい。兄弟の話とか?いや、何でも良いんだけど…。

いつも聴いてもらってばっかりだから、私、天沢のことあんまり知らないし…」

「…兄弟はいるよ。弟が一人。四つ下だから…中学一年生だね」

天沢は力のない声で、誰に伝えるわけでもなく虚空にぽつりと呟いた。

明らかにいつもの彼じゃない。

でも、ここまで来たら引けない。