「…もう大丈夫」
しばらくすると、今度こそ涙は途絶えた。
目から水を流しただけなのに、気持ちが整理されてスッキリしている。
きっと、隣に彼がいるから。
「あの、ごめん。急に呼んだりして。…その、私…、、」
「無理して話さなくていいよ。僕を呼んでくれてありがとう」
こんな夜中に呼び出された挙句、隣で嗚咽を聞かされる羽目になったのに、彼はいつもと変わりない穏やかな微笑みを浮かべた。
不快、怪訝、不愉快。
そんな感情、天沢にはないのかもしれない。
君の優しさは、魔法みたいに人々を救う。
君の笑顔は、どんな花よりも美しい。
君の言葉は、春の淡い日差しのように柔らかくて、綺麗だ。
そんな君だから。
「天沢に聞いて欲しいの。聞いてくれる?」
「…うん。そういうことなら、もちろん」
天沢の細いのに柔らかい手にぐっと力を込めると、彼は私の手を包み込むようにもう一方の手を重ねた。
体温は冷たいのに、何故か心は温まっていく。
