もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「…天沢の驚く顔ってレアだな、って最初は思っていたけれど…天沢、驚くこと多くない?」

…それでも、驚いた顔まで端麗なので慣れない私。

「…それは、水瀬さんが急に優しいこと言うから」

目線をずらし羞恥心を公にした表情は、初めて見るものでドキリと心臓が燃え上がる。

予想外すぎて返す言葉が見つからない。

心臓の音が煩くて適当に言葉を拾おうと思うのに、何故か声が発せなくて口をパクパクさせるだけになってしまう。



──千晴くんのこと、好き?



な、なんで今、これを思い出すの!!


「あー!狡い!!」

羞恥心で頭がいっぱいになって、もう何が何だかわからなくなる。

とにかく叫ぶと、天沢が体を震わせて、こてりと首を傾げた。

「えっと、、その、ごめん。怒らせるつもりじゃ…」

困惑と謝意に覆われた表情は、雨が降る予兆に似ている。

それなのに、何故だろう。

連想してしまうのは、雨とは真逆の雲ひとつない真っ青な青空。

鮮烈な光に満ちた、太陽だ。

「天沢は悪くないから気にしないで。この話はもう終わり。テストで説明聞いてもわかんなかったとこ、あるの。教えてくれる?」

「うん、もちろん!」

天沢はさっきの余韻を全く残さない、花が綻ぶ瞬間よりよっぽど美しい笑みで頷く。

高鳴る心臓に気づかぬふりをして、私はノートを開いた。





その日は、約束通り互いにケーキを奢り合って、いつもより長い時間を共にした。

天沢の勉強の解説は、授業よりよっぽどわかりやすくて、彼の頭の良さを身にしみて感じた。



ケーキは二人して顔を見合わせるほど美味しかったし、テストは今までの最高記録だったし、わからない問題もすんなり理解できた。


良いことばかりなのに、何故だろう。



──水瀬さん



一番心に残っているのは、君が呼ぶ大嫌いな名前だ。



柔和な声。

穏やかな微笑み。



「天沢…」


寄れた糸のように見窄らしい声が、鼓膜に谺した。