「わぁ、わぁ…」
机いっぱいに広げられた答案紙を見て、小柄な彼は瞳を輝かせた。
どんな星も見劣るくらいに、その双眸はキラキラと眩しい。
私は照れ臭さと恥ずかしさに眉を顰める。
「…反応が女子」
思わず不機嫌な声音になってしまったが、彼はそれを気にする様子もなくこちらに眩しい瞳を向けた。
私はその美しさにぐっと言葉を詰まらせる。
「ありがとう、わぁ、すごいなぁ…」
「何がありがとうなの、ていうか天沢だってまた一位じゃない。その方が断然すごいよ」
あまりにも反応が大袈裟なので、複雑な思いを打ち明けてしまう。
だって、どんなに順位が上がっても万年トップの天沢には敵うはずがない。
天沢は自分の順位などすっかり頭から離れていたのか、それを聞いた途端に笑みを消した。
数秒も経たずに、彼は私にくるりと背を向けてしまう。
「あ、天沢?」
「…本当にすごいと思ってるんだ。嬉しいし、感動してる」
彼の声は力なく、微かに不安げに揺れている。
表情は見えないけれど、きっと誰もが励ましてあげたくなるくらいに哀愁感をただ酔わせていることだろう。
「…信じてくれる?」
寂しさも悲しみも全部押し殺して、彼は微笑みながら振り返った。
そこで、やっと気づく。
きっと彼は私が「トップの天沢がこんな順位、すごいと思うわけ?」と疑っているのではないかと勘違いしたのだ。
私は疑いの気持ちなど一握りもないのに。
ただ、彼が他人の幸せをこんなに喜べることに驚き、戸惑い、こんなことで褒められていいのかな、と不安になっただけだ。
「…天沢が嘘つかないことくらい知ってる。ありがと、そんなに褒めてくれるなら、次も頑張る」
天沢は意表を突かれたみたいで、悲哀に満ちた瞳を輝きがこぼれ落ちそうなくらいに大きく瞬かせる。
長い睫毛は、合わさるたびにぱちりと音がなりそうだ。
