何故か緩んだ涙腺に気づかぬふりをしながら、少し早歩きで歩いて天沢の前に立つ。

大きく息を吸って振り返ると、波打っていた心は凪のように落ち着いて自然と口が開いた。

「ここまでで大丈夫。今日はありがとう。
今度は私に何かさせてね。

何かあったら…教えてね」

人生で一番と言っても過言ではないくらいの満面の笑みで、私は手を振った。

天沢はいきなりのことに軽く目を見開きながらも、ふんわりと頷いて手を振り返す。

「うん、またね。水瀬さん」



天沢の笑みは、いつ見ても心を締め付けられる。

綺麗で、優しくて、柔和で、切なくて、脆くて、儚くて。

何度だって、私は惹かれてしまう。




彼のそばにいたい。




その傷に、触れさせて欲しい。






真っ暗な空に浮かぶ星を見上げ、無意識に手を伸ばす。


いつになく眩しいその光に、縋るように。