「何か冷やすものとかっ」
「だ、大丈夫だよ。僕、左利きだし…」
私が手を離した瞬間、天沢は袖を引っ張って怪我を隠した。
彼の表情には困惑と焦燥が滲み出ていて、それ以上踏み込むことはできなくなってしまう。
「…わかった。でも、痕が残らないようにね」
綺麗な容姿してるんだから、という言葉はやっとのところで呑み込んだ。
彼はなんとなく自分の容姿を好きではないような気がしたから。
会ったばかりの頃、道端の人の視線を集めていた彼は好意の視線から顔を背けた。
あの時は彼を良く知らなかったからなんとも思わなかったけれど、今は違和感しか感じない。
彼はよっぽどの理由がないと、人を避けないから。
「水瀬さんはやっぱり優しいね」
「もうっ、天沢はそればっかり」
天沢がまた私を褒めるので細やかな抵抗ということで頬を膨らませると、彼は楽しげに肩を揺らして笑った。
でも本当に思ってるから、と追い討ちまでかけられる。
天沢には到底敵いそうにない。
