もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「ありがとう、水瀬さん。来てくれて」

「…え?」

唐突なお礼の言葉に私が首を傾げると、天沢はだって…と言葉を続ける。

「水瀬さんが来てくれなかったら、もう話すことはできなかったと思うから。この幸せな時間は来なかったから。

また君と会えて良かった」

「そ、そんなの…私が元凶だし、それに…天沢のためっていうか、私のために来たっていうか…」

気恥ずかしさに呂律が回らない。

思わず俯くと、驚くべきものを見てしまう。

視界に入ったものが信じられなくて咄嗟にそれを手に取った。

「ちょっ!な、なんで手当の一つもしてないのっ、痛々しい…、え、これ、相当…」

私の手には、彼の右手が握られている。

それは決して仲良く手を繋いでいるわけではなく、彼の内出血を起こしている右手を労っているだけだ。

肌が白いせいか、赤みが目立つ。

思わず目を背けてしまうくらいに、彼の右手は痛々しかった。

「えっ、あぁ…体育のときの。大丈夫だよ、そんなに酷くな…」

「ど、どこがっ!?え、どこ見て言ってるの!?何か冷やすものっ」

当の本人は一瞬隠し事がバレた子供のように身を怯ませて、事情を思い出すと同時に安堵した表情を浮かべた。

彼の表情の変化の理由は検討もつかないが、自分のことに無頓着すぎることだけははっきりわかる。

天沢はきっと血だらけになろうと、そばに擦り傷を負った人がいればそちらに手を差し伸べるだろう。