もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「水瀬さんと友達になりたい、と羽虹が言った時僕はそれは一番の解決策だ、って思った。水瀬さんと羽虹、両方にとって」

「…うん、そうだと思うよ」

天沢に彼自身を認めて欲しいと言う願いから、首を上下に振る。

でも天沢の表情はそう簡単には晴れずに、だんだんと暗くなっていってしまう。

夜が近づく空と、繋がっているみたいに。

「僕は男だから、水瀬さんといたら、また…良くないことが起こるかもって、情けないけれど思っていた」

気づいたら、空はもう淡い紺色に覆われていて、太陽はどこにもいなかった。


私はついさっき羽虹から聞いた話を思い出して、悲しくなる。

天沢と羽虹は、勝手に勘違いされて、互いを守るために離れてしまった。

天沢は自分のせいで羽虹が女子との関係に失敗してしまったことを、ずっと悔やんできたのだろう。

そして、また私が同じことのなったら、と密かに悩んでいたのだ。


だから学校では目線さえ合わないし、私を見る瞳だって他と変わらない。

彼はこれ以上ないくらいに私のことを考えてくれていたのだ。


そこには計り知れない後悔と苦悩が隠されているのにも気づけず、私は「他人に見られたくない」だの、「もしもの時は天沢がなんとかしてくれる」だの、勝手なことを言っていたのだ。


なんて馬鹿なんだろう。


「だから、それを防ぐにはやっぱり羽虹がやろうとしてることが一番良くて、背中を押した。

…でも、あの日水瀬さんに言われて気づいたんだ。


僕が頼めば、羽虹は断れない。


それがわかってて、僕はきっと…」

「そんなの、天沢が優しいからじゃんっ」

段々と色を失っていく天沢の表情を見てられなくて、私は彼の言葉を遮った。

天沢はそれに対しても怪訝そうな表情一つ見せずに、ただただ悲しみに溢れた瞳を隠すように睫毛を伏せる。


綺麗だと思った。


きっと私は、何度でも彼に惹かれ、見惚れるのだろう。