もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

その日も、いつも通りに彼は素直に真っ直ぐな言葉を吐いた。

『…こんなこと言うのは最低だってわかってるけど…千晴は注目の的なわけで、やっぱり女子の羽虹が一緒にいるのはあんまり良くないのかもな。

三人でいたい。その気持ちは俺も同じだけれど…大切な人が傷つくのは我慢できない。千晴も同じ気持ちだと思う。

…俺は、羽虹のそばにいるよ。俺は千晴みたいな人気者じゃないし、大丈夫だろ。揶揄われたら、俺は怒るし。

…まあ、とにかく。千晴の代わりにはなれないけど、俺は羽虹の味方だからなんでも言えよ』



──大人になろう。

そう思った。

優しくて穏やかだけど、本当は人見知りな王子様。

素直で真っ直ぐな、勇気と希望に満ちた勇者様。

そんな二人と出会えた。

仲良くなれた。

優しい言葉をもらえた。

それだけで、本当に幸せなことだから。


もう、充分だ。






私は千晴くんと颯希と学校で話すことはなくなった。

颯希はやっぱりああ言っていたけれど、もしも何かがあったら頭が上がらない。

その代わり、家に帰ってからは家が隣なので窓から顔を出して話す。

千晴くんとも隙ができれば話しかけて、暇な日は三人で勉強会をした。

千晴くんはいつも予定が詰まっていて、なかなか都合は合わなかったけれど、それでも彼はなんとか時間を割いて来てくれた。



高校受験も彼らの行く高校を迷わず選んだ。

颯希も千晴くんは中学で首位を固めているので、もちろん行き先の高校は県内トップ。

私はそんなに勉強は好きではないけれど、一年半前から必死に勉強して、なんとか合格を果たした。

周囲の目があるので三人で合格発表を見に行くわけには行かなかったけれど、家に帰った瞬間皆で颯希の家に集まってお祝いをした。


私たちの鎖は外れなかった。



充分、と思っていたけれど、私は彼らが本当に好きだから。

離れられるわけない。

迷惑だってわかってもやめられるものじゃないなぁ、と我儘な自分に笑った。