もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

静けさに包まれる空間。

柔らかな風が彼の繊細な髪を揺らした。


久しぶりの、二人きりだった。

『…すごいね!千晴くんは。王子様みたいに爽やかで優しいし、そりゃあモテるよね!ありがと、助けてくれて!かっこよかったー』

居た堪れない空気をどうにかしたくて、ひたすらに言葉を並べる。

自分が何を言っているのかも、もうわからなかった。

それでも良い。

なんでも良いから、全部無かったことにしたかった。


私が人に嫌われていること。

誰にも見てもらえないこと。

千晴くんから離れられなかったこと。


全て、無に戻したかった。


でも、振り返った彼の表情は痛々しいもので思わず泣きそうになる。

『辛い思い、させてごめん』

彼の謝罪の言葉に、私の思考回路は完全に方向転換した。

なんで千晴くんが謝るの?

なんで彼が泣きそうな顔をするの?


違う。

全部私のせいだ。


私がちゃんとあの時、千晴くんから離れておけば彼とこんな風に別れることはなかったのに。

いや、それ以前に学校では適切な距離を保って居れば。

ううん、私なんかが千晴くんと颯希の幼馴染にならなければ。




…嫌だ、嫌だよ。

楽しくて仕方がなかった過去を、否定なんかしたくない。



でも、わかってしまった。

あの頃のままなんて、変わらないことなんて、できないんだ。


それに気づくのが、私は遅すぎた。


『全部…私がっ』

『羽虹、羽虹が悪いことなんて何一つないよ、泣かないで…』

幼児にように泣きじゃくる私を、千晴くんはただただ庇ってくれた。



終わってしまったんだ。

儚く、短い夢は。


美しい花も、必ず散ってしまうように。