次の日。
放課後の教室は、数十分前の五月蠅さの余韻をほんの少しも残さない静けさに包まれている。
聞こえるのは窓に叩きつける、雨粒の音だけ。
今年一番の大雨。
誰もいなくなった教室で私は独り、帰るタイミングを探っていた。
しかし、しばらくしても弱まる気配が一切しない。
諦めて帰ろうと席から立ち上がったとき、予想外の出来事は起きた。
「あ、水瀬さん。まだいたんだ。
ちょうど良かった。信じられないと思うけれど、聞いてくれる?」
冬の寒さのせいか、身体が震えた。
──耳を塞ぎたい。何も聞きたくない。
そんな考えが頭をよぎったけれど、平穏な学校生活のために少しだけ頷いた。
俯いた、の方が正しいかもしれないけれど。
でも…やっぱり聞くべきじゃ、なかったんだ。
