もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

俯いている私の視界に、静かな足音と共に真っ白な靴が現れる。

光に吸い寄せられるように顔を上げた瞬間、はっと息を呑んだ。

彼が今までになく、泣きそうな顔をしていたから。

『いなくなればいいのに、って思ったこと本当にない?』

また悪口を再開する彼女らに、千晴くんは振り向いて近づいていく。

『誰から見ても邪魔…』

そして、彼女の唇に白くて細い人差し指を当てた。

流石の彼女も口を継ぐんで真っ赤になる。

『それ以上言ったら怒るよ』

酷く静かな、澄んだ声音だった。

珍しく、彼を取り囲む柔らかい雰囲気が姿を消していた。

彼は怒っているのだろうか、と他人事のように思う。

だって彼が怒ったことなんて、ううん、不快さを顔に出したことさえなかったから。

千晴くんと怒るという単語を並べるのはなんだか変な感じがした。




それに、そこにいた私を含める全ての人が心も視線も奪われるほどに、彼は眩しくて。

とても誰かに苛立ちを感じているようには思えなかった。


『…っ!』

『えっ、ちょっと待ってよっ!!』

しばらくの沈黙の後、千晴くんに人差し指を当てられていた女子が倉庫から勢いよく駆け出していった。

彼女の頬の赤みは、怒りではないと思う。


一緒にいた取り巻きの女子も慌てて彼女を追いかけていった。