大人しくて人見知りな私たちの弟、はどこにもいなくなった。
誰もが認め、愛する才色兼備の王子様。
彼は変わった。
それも、きっと良い方に。
千晴くんは人前に出ることが増えた。
苗字が変わった。
笑顔に切なさや儚さが増した。
彼の周りに人が集まるのが当たり前になった。
何度も告白されていた。
部活がバラバラになって一緒に帰ることが減った。
夏休みの宿題だった絵画と作文で同時入賞を果たした。
模試で誰もが感心する結果を残した。
でも、変わらないことだってある。
彼は幼い頃から誰もが目を惹く、美しい容姿をしていたし、心優しい子だった。
それに千晴くんはどんなに人気者になっても、私たちといる時間をなくそうとはしなかった。
彼は努力家で真面目で心優しい、私たちの親友で幼馴染だ。
私も颯希も寂しくなかったといえば嘘になる。
千晴くんがどんどん離れていく気がして、二人静かに彼の背中を見つめていた。
それに、彼の変わったきっかけは実親の死と再婚。
彼が無理をしていないか、心配だった。
義父が連れ子をよく思うのだろうか。
彼は肩身狭い思いで必死に生きてるのかもしれない。
でも、その心配は杞憂で。
彼の新しい父親はとても温和で、いつでも千晴くんのことを大事に思っている優しい人だった。
初対面だった私と颯希にもにこやかに話しかけてくれる義父に、私は強い安心感を覚えた。
この人は、千晴くんの親に相応しい人だ。
そう強く感じたのを、今でも覚えている。
