でも、聞きたいことはこれじゃない。
私は自分を奮い立たせて、もう一度口を開いた。
「今日…大丈夫だった?」
「え?…あ、体育のこと?平気だよ。
天沢くんには悪いことしちゃったけど…私は擦りもしてないし。
天沢くんは保健室にも行ってなかったからなぁ、心配…」
言葉が足りなくて羽虹は一度首を傾げたが、すぐに思い当たることから答えを導き出してくれる。
口下手なことを申し訳なく思うが、今はそんなことを言っている場合ではない。
彼女は今、天沢のことを『天沢くん』と呼んだ。
確かにあの時は『千晴くん』と言っていたのに。
「羽虹は天沢が好きなの?」
「…え?」
「今日、千晴くんって呼んでたよね。本当は誰よりも天沢に近い存在なの?」
淡々と述べてしまうと怖がらせてしまう。
今まで経験してきた全てに最新の注意を払って、私は羽虹に問いかけた。
落ち着いた柔らかい声で、ゆっくりと。
でも羽虹は完全に硬直してしまった。
睫毛の一本さえも動いていない。
やっぱり私には「優しく」なんて無理なのかも。
「…ごめん、言えなくて。でも、どういえば良いのか…わからなかったの」
ゆっくりと視線を落とす羽虹を、私はじっと見つめた。
でも、彼女の口から出た言葉は私の予想を擦りさえもしていないものだった。
「千晴くんは私の幼馴染なの」
