放課後──
「羽虹、外で話したいんだけど…良い?」
「…うん、行こっ」
羽虹は通学鞄を抱えて私の横に並ぶ。
もう何十回も通っている道のりなのに、靴箱が今までになく遠く感じられた。
生ぬるい風が、木々を揺らす。
私たちはあの日天沢にノートを貰った、旧校舎の倉庫前に来ていた。
二人で並んで段差に腰を下ろす。
薄い壁一枚分ほどの距離。
羽虹は私の言葉を待っているのか、何も言わずに古びた校舎を眺めていた。
…心臓が止まりそうだ。
何から言えばいいのか全くわからないし、これで幸せの全てが終わってしまうと考えると唇が一ミリも動かない。
でも、ここまで呼び出しておいて何も言わないのは最低だ。
最低な私でも、それくらいはわかる。
ぐっと全身に力を入れると、少しだけ口が開いた。
ちゃんと、言わなきゃ。
勢いに任せて、私は感情をそのまま言葉にした。
「ごめん、羽虹。私、今日変だったよね」
「そんな…謝ることじゃないよ。そういう日もあるよね」
乾き切った心に、優しさがじんわりと染み渡っていく。
