もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

ここまで来たけれど、諦めるしかない。

筆箱くらいなんとでもなるし…。

この中に入る勇気は、私には到底ない。


忍び足で元来た道を辿ろうとすると、聴き慣れた名前が耳に届いた。

「羽虹って千晴様のことガチで好きなん?」

全身が凍りついたような錯覚に襲われる。

だめだ、これは聞いちゃダメなやつだ…。

絶対に、この人たちは天沢を褒めた羽虹を良く思っていない。

必ず、言葉の刃を振るう。



親友の悪口を聴いて、止めに入れるような正義感は、私にはないから。

羽虹を守れない私に、それを聴く資格はない。

「えーなんか憧れって感じじゃないの?ていうか、千晴くんのこと好きな人とかもうそこら中にいるから限りなくね?」

私は思わぬ方向に進みそうな会話に、足を動かす力をなくす。


どうしてこんな大声で話すんだろう…。

陰口は嫌いだけれど、これはこれで、痛い。


「いやぁ、それがさーそうとも限らないわけよ」

「えー?」

ころころと変わる雰囲気にぐっと全身に力を入れる。

ここをいち早く離れないといけないとわかっているのに、足が動かない。

なんでよりによって、大親友と命の恩人の話をしているときに来てしまったんだろう。

どうしようもないほどの後悔が、更に私の体を重くしていく。

「知ってる?羽虹と千晴様って中学も同じって」

「えーマジー!?」

女子達のテンションがどんどん上がっていく。

知ってる、これ…ダメなやつだ。

こういう時、女子は軽々と人の悪口を言う。

まるで呼吸をするかのように、安易に。