「今回のテストはちょっと難易度が高かったな」
テストが終わった。
長い長いテスト勉強が、今。
「ですよね!滅茶苦茶難しくて空欄だらけですもん!」
「簡単に作ってくださいよ、先生ー!赤点ばっかになっちゃうじゃないすか」
「おいおい、自信持って言うことじゃないだろ、勉強しろ勉強を」
教室のテンションもいつもの数倍高い。
さっきまでの静けさはどこにいったのか聞きたくなるくらいに。
さりげなく天沢に目線を送ると、彼はいつも通り先生の話を背筋をピンと伸ばして聞いていた。
窓からさす木漏れ日はお昼寝にぴったりなのに、一度も眠そうにしているのを見たことがない。
きっと授業態度も成績も良い彼の通知表は、五だらけなんだろう。
努力があってこそとはわかっているが、やっぱり羨ましいし、少し嫉妬してしまう。
天沢にできないことなんて、あるのだろうか。
ここ数日、そんな疑問が湧いていた。
天沢の手作りノートは私の成績を大幅にアップさせたことだろう。
見やすさ、わかりやすさ、丁寧さ。
どれをとっても満点以上。
何より字が今まで見た誰よりも綺麗で繊細だし、所々絵も描いてあったりして。
私なんかとは比べ物にならないくらいに高い女子力が、全てから滲み出ていた。
しばらくぼーっと天沢の整った姿勢を見つめていたが、見過ぎると敵を作ることになるので視線をずらす。
すると、羽虹が先生の目を盗んで後ろを振り返った。
「雨音ーどうだった?
ちなみに私、数学終わった…」
羽虹はそう言いながらも、テストが終わったことが余程嬉しのか、声が弾んでいる。
「数学は同じく自信ないけど、いつもより勉強したから他の教科は普段より解けたかも」
まあ、私も人のことは言えない。
