「うーん、そうだなぁ…全くないとは、言えないかな」
天沢は少し首を傾げて考えた後、答えを出してくれた。
天沢はどんな質問をしても、驚くほど真剣に考えて答えを出してくれる。
だから話しやすいのかもしれない。
「できることは全部やろうと思っているから、焦ってもやることは同じだし…。
テスト前とかテスト中は順位は意識してないかな」
「うわぁ…努力してるねぇ…」
天沢の徹底された勉強に対しての熱意に私が思わず感嘆の声を上げると、天沢は切なげに微笑んだ。
まあ、言われ慣れてるか…。
でも…なんか、なぁ…なんでそんな寂しそうな顔をするの…?
「でも…順位を見るときはちょっと怖い。一位を取られたら困るから…」
今にも消えてしまいそうな弱々しい声。
天沢は一番に依存するような人間じゃないので、きっと期待に応えるとかそういう理由だろう。
全く…天沢の人生は天沢の物でしょ!?
私は思わず机に手を付いて勢いよく立ち上がった。
ガタッと椅子が下がる音に、天沢がびくりと肩を揺らす。
前にもこんなことがあったな、と思いながら私は届くかどうかわからない思いを声に乗せた。
「天沢はすごいと思う。普通ずっと一位なんて取れるもんじゃないよ。プレッシャーとかやばいと思うし。
でも、別に…たまには力抜いても良くない?天沢が二位になっても誰も呆れたりしないよ。ずっと努力してるの辛くない?
私は天沢が一位だろうが、二位だろうが、五十位だろうが…どうでもいいよ。天沢が天沢なら…それで充分」
心の膿を吐き出すかのように、私は一気に全てを出した。
天沢が表情を歪めるのを見ているのは、苦しくて仕方がないから。
天沢はしばらく目を見張って私を凝視していた。
充分…?本当に?
これで、今の僕で、良いの?
そんな心の声が聞こえる気がする。
「天沢が笑ってるなら、私はそれで良いよ」
