もしも願いが叶うのならば、私は君の光になりたい

「安東 颯希(あんどう さつき)。今年も去年も二組だったんだけれど…知らない?
出席番号一番で」

私は小さい脳で必死に記憶を辿る。

クラスメイトの名前なんていちいち覚えてやしないが、出席番号が一番なら名前を聞く機会も多かったはずだ。

なんとなく聞き覚えがあり、うっすらと顔も思い出せた。

…男子だったなぁ。結構、人気の。

はやとちり…恥ずかしくて死にそうっ…!


「なんとなく…知ってる。頭良いの?」

「学年二位なんだ。結構フレンドリーで、皆には頭良いようには見えないって言われてる。
でも努力家だし、賢いし…すごく優しいよ」

さっきの態度とは裏腹に、どこか楽しげに天沢は安東くんのことを褒める。

ライバルである相手に対しての言葉だとは到底思えない。

でも、天沢には妬むという感情はなさそうなので、相手が誰だろうが心から賞賛することができるのかも。


…完璧人間はどこをとっても完璧なわけね。



「天沢は焦ったりしないの?安東くんに一位取られたらどうしよう、とか」

私は意地悪でも皮肉でもない、純粋な疑問から声を出す。


天沢の感情に嫉妬という文字がないことは分かったが、なら焦りはどうだろう。


単純だけれど、答えの分からない疑問。


天沢はマイペースといえば、否定はできないように思う。

天然で、鈍感で…そこが人気の秘訣なのか知らないけれど…。


でもだからといって、何事も気ままにやってるようには見えない。

真面目だし、優等生だし、しっかり者だし。


でも…なぁんか抜けてるんだよね。


そんな完璧だけれど、鈍感で天然な天沢。

彼の心に、自分の順位に対して焦りの色が滲むことはあるのかな。

今までになく興味津々に、彼の返事を待つ。